January 24, 2007

獄中記

獄中記
獄中記佐藤 優

岩波書店 2006-12
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starブック・ガイドとしても魅力的
star成熟のプロセス
star久しぶりに読む国家との喧嘩の作法

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国家の罠〜外務省のラスプーチンと呼ばれて,国家の自縛に続けて本書を読んだ。 著者は、獄中、読書、思索、勉強を続け、毎日の知的活動をひたすらメモに記録した。その記録を元に、逮捕されるまでの外交官としての活動と、逮捕後の検察官との攻防を記録した国家の罠は、保釈後にまとめたもの、その後の国家の自縛は、対談を記録したもの。そして本書は、獄中のメモ、日記、弁護団に宛てた書簡、あるいは知人、外務省の後輩に宛てた書簡等を時系列にまとめたものである。当然ながら、記されている筆者の考え等は、前著2冊とかぶるのだが、その『獄中で書いている』という臨場感はすさまじい。 とはいえ、拘置所外部へ宛てた書簡等はすべて検閲されるので、事件の核心に迫るような記述は一切排除されており、メインは著者の獄中生活を支えた、学習記録、読書記録、思索メモである。私自身、哲学、宗教、思想分野には全く明るくないが、この分野を志す人には最適な読書案内書となるのではないか、と思う。 よくも悪くも、獄中の日記、書簡等を時系列に並べただけ(但し、脚注の充実ぶりには目を見張るものがある)のものであり、一見読みにくそうではあるが、著者の獄中日記の部分と、外部へ宛てた書簡部分のフォントを区別するなど、装丁上の工夫も見られ、比較的読みやすい。 以下、気になった部分の抜粋。
政治犯罪はいかなる国家にもどの時代にもある。戦前の日本には治安維持法があったから状況はわかりやすかった。戦後は、政治犯は存在しないという建前となっているので、政治犯罪を経済犯罪に転換するという作業が必要になる。それで贈収賄、背任、偽計業務妨害のような犯罪がつくられていくのだ。
建前上は政治犯の存在を認めていない戦後日本で、経済犯罪にマッピングして摘発する、という考察には、「なるほど!」とうなってしまった。こういう見方をすると、なぜライブドアが摘発されたか、ライブドアよりも多額の粉飾決算を行っている会社が摘発されないのか、理解ができるような気がする。
かつて行った政治的行為が後に「犯罪」であると断罪されることは、それ程珍しくない。問題は何故にそのような価値観の転換がなされるかということである。ここで個人は記号化、象徴化され、一つの時代の責任を負わされる。重要なことは、このような価値転換の背景にあるパラダイム(位相)の転換を見極めることである。
確か中世の大学では、書籍は一冊ずつ与えられ、それを筆写するか暗記するまでは次の本が与えられなかったはずである。
(仕事に関係する分野で)一冊の本をじっくり読むという機会から遠ざかっているものとしては、とても耳の痛い話である。
シュバイツアーが神学者から医師に転換したのが40台はじめ、夏目漱石が学者から小説家に転換したのが40歳であった
夏目漱石が『吾輩は猫である』の中で、猫に「日本人はなぜすぐに謝るのか。それはほんとうは悪いと思っておらず、謝れば許してもらえると甘えているからだ」と言わせています。(中略)私や鈴木先生のとった行動が正しかったか否かを判断するのは歴史であり、政治化した裁判所ではありません。司法官僚相手にエネルギーを使うことが率直に言って時間の無駄に思えてなりません。
素人が専門家の世界に口出しすべきではないとの原則をもっています。
私が学術書を精読するときは、同じ本を三回、それも少し時間をおいて読むことにしています。 第一回目、ノートやメモを取らず、ときどき鉛筆で軽くチェックだけをして読む。 第二回目、抜粋を作る。そして、そのとき、内容を採光性した読書ノートを作る。 第三回目、理解が不十分な箇所、あいまいな箇所についてチェックする。 このような読み方をすると、10年経っても内容を忘れることはありません。
私の場合、速読とはペラペラと頁をめくりながらキーワードを焼きつけていく手法です。目次と結論部分だけは少しゆっくり読みます。(中略)そして、ワープロで、読書メモを作ります。
人間の「知」は、その時代、時代に対応する流行の衣装をもっていますが、その身体はそれほど変改しないというのが私の仮説です。
この本ではなく、国家の罠にあった、国策捜査に対する検察官の考え方がとても印象に残っているので、抜粋しておく。
「ただね、国策捜査の犠牲になった人に対する礼儀というものがあるんだ」
「どういうこと」
「罪をできるだけ軽くするということだ。形だけ責任をとってもらうんだ。」
「よくわからない。どういうこと」
「被告が実刑になるような事件はよい国策捜査じゃないんだよ。うまく執行猶予をつけなくてはならない。国策捜査は、逮捕がいちばん大きいニュースで、初公判はそこそこの大きさで扱われるが、判決は小さい扱いで、少し経てばみんな国策捜査で摘発された人々のことは忘れてしまうというのが、いい形なんだ。国策捜査で捕まる人たちはみんなたいへんな能力があるので、今後もそれを社会で生かしてもらわなければならない。うまい形で再出発できるように配慮するのが特捜検事の腕なんだよ。だからいたずらに実刑判決を追求するのはよくない国策捜査なんだ。」

Posted by money at January 24, 2007 12:38 PM | TrackBack
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